このガイドでは、防音室の自作の中でも、防音室の壁の自作について解説いたします。防音壁の基本的な原理・構造から必要な材料や工具、施工のポイントからよくあるトラブルの対処法まで、詳しく解説しています。初心者の方でもわかりやすく進められる内容となっていますので、ぜひ参考にして、ご自宅の空間をより静かで快適な場所に変えてみてください。それでは、さっそく始めましょう!

防音室の壁の構造は?
防音室の壁に使用する素材は?
防音室を段ボールでも作れるか?
みなさん、ぱぱさくです。どうもです。前回は防音室の構造について、図面を用いて解説させていただきました。用いた図面は防音室自作後に作製したもので。。。
実際は見にくいメモ図面で施工してましたよね(笑)。
今回は防音壁を自作するための基本的な知識から実際の製作工程までをご紹介いたします。
また、賃貸住宅でも使用可能なダンボールを使った簡易な防音室の壁の自作も提案いたします。この方法は簡易に防音室の壁を自作できるため、部屋を防音室にしたい方も必見です。
実際の施工状況もお伝えしながら防音室の壁の自作について解説させていただきますので防音壁材に何を使ったら良いのか、どうやって防音壁を自作したらよいのかわからない方は、是非ご一読ください。
防音室の壁の仕組み、構造
防音壁の仕組み
防音壁は、外部や隣接空間からの音を遮断し、室内の静粛性を保つために設計された構造です。基本的な仕組みは、音のエネルギーを吸収・反射・拡散させることで、音の伝播を抑制することにあります。
防音壁は主に以下の要素から構成されます。
- 遮音層(防音材):音を吸収・反射させるための素材。例えば、吸音パネルや吸音フォーム、重い遮音シートなど。
- 空気層:遮音層と壁の間に設ける空気の層は、音の伝播を減少させる役割を果たします。
- 構造体(下地やフレーム):壁の形状を支え、振動を抑える役割を持ちます。振動が伝わると音が増幅されるため、振動を抑える工夫が重要です。
これらの要素が組み合わさることで、音のエネルギーが効果的に減衰し、遮音性能が向上します。
遮音材だけの構成になりますと、音が防音室内に篭ってしまい、響くだけでなく、音の減衰が弱いため、大きな音を発生させた場合は防音室内に居る人の身体的な負荷を与えてしまいます。
また、吸音材だけでは室内で発生した音を室内に閉じ込めることができず、防音室外に通してしまい、防音効果が得られません。
このため、防音壁の材料を選ぶ際は「吸音材」と「遮音材」の二つを組み合わせることをよく検討しましょう。
音の伝播と遮断のポイント
音は空気の振動として伝わり、壁や天井、床を通じて広がります。防音壁を効果的に設計するためには、音の伝播メカニズムを理解し、それに基づいた遮断ポイントを押さえることが重要です。
1. 音の伝播経路を遮断する
音は空気を振動させながら伝わるため、まずは空気の振動を遮断することが基本です。厚みのある遮音材や吸音材を用いて、音エネルギーを吸収・減衰させることが効果的です。
2. 振動の伝達を抑える
壁の構造が振動を伝えると、その振動が増幅されて音となって漏れやすくなります。したがって、二重壁や防振材を挟むことで、振動の伝達を抑制し、遮音性能を高めることが重要です。
3. 隙間や継ぎ目を完全に封じる
音は隙間や継ぎ目からも漏れるため、壁の接合部分や開口部には気密性を高める工夫が必要です。シーリング材や気密テープを用いて、隙間を徹底的に塞ぐことが遮音効果を向上させます。
4. 空気層の適切な設計
遮音層と壁の間に空気層を設けることで、音の伝播をさらに抑えることができます。空気層の厚さや配置を工夫することで、特定の周波数帯域の音を効果的に遮断できます。
これらのポイントを押さえることで、自作の防音壁の遮音性能を最大限に引き出すことが可能です。
防音室の壁の材料、使用する工具
材料
- フレーム:赤松垂木 28mm×60mm
- 壁面パネル:12mm合板、12.5mm石膏ボード
- 吸音パネル:パンチカーペット、吸音材や貫通孔加工吸音壁材(今回はパンチカーペットを使用)
- 換気口:ホワイトウッド1×4
- 遮音材:ダイケン 遮音シート940SS 1.2mm×940mm×10000mm
- 吸音材:ニードルフェルト10mm×910mm×10000mm、ダイケン吸音ウール50mm×415mm×1215mm
- コースレッド:38mm、半ネジタイプ
- コーキング剤
防音室の材料について詳しくは下記のページにて掲載しておりますので防音壁の材の選定に悩んでいる方はこちらをご参照くださいませ。
【防音室自作!完全攻略】|費用・材料・施工ステップを詳しく解説!その2~材料の選定編~
使用する工具
- ジグソー(丸鋸が良い)
- 電動ドライバー
- タッカー
- コーキングガン
- 丸鋸ガイド(あればベター)
- メジャー
防音パネル(合板)やフレーム(赤松垂木材)をカットする際にジグソーか丸鋸を使用します。
これらがない方、若しくは住宅街での作業で作業音が気になる方は、ホームセンターのカットサービスで予めカットすることをお勧めします。
また、フレーム材は長さが長いため、自家用車での運搬も難しい場合もカットサービスの利用が良いです。
タッカーは吸音材(ニードルフェルト)や遮音材を防音パネルに固定する際に使用します。
電動ドライバーはインパクトドライバーでも良いですが、インパクトドライバーはある程度の騒音を発生しますので、住宅街での作業は電動ドライバーをお勧めします。
なお、DIYでの作業音対策については下記コンテンツにおいても詳しく紹介しておりますので、住宅街でのDIY作業音が気になる方はこちらもチェックしてみてください。
【DIY作業中の騒音対策ガイド】静かに作業を進めるための効果的な方法まとめ
コストと準備のポイント
自作防音室を作る際には、必要な材料や工具の選定とともに、コスト管理や準備段階でのポイントを押さえることが成功の鍵となります。以下に、そのポイントを詳しく解説します。
1. 予算の設定と優先順位の明確化
まずは、全体の予算を設定し、どの部分に重点を置くかを決めましょう。防音性能を重視する場合は、防音材や二重壁の材料に投資し、コストがかさむこともあります。逆に、コストを抑えたい場合は、必要最低限の材料を選び、DIYの工夫でコストダウンを図ることも可能です。
2. 材料の選定とコスト比較
さまざまな防音材や工具がありますが、価格だけでなく性能や入手しやすさも考慮しましょう。例えば、吸音パネルや遮音シートは種類やブランドによって価格差が大きいため、複数のショップやオンラインストアで比較検討することをおすすめします。
下記に材料について詳しく解説しており、オンラインストアでの購入も紹介していますのでご参照くださいませ。
【防音室自作!完全攻略】|費用・材料・施工ステップを詳しく解説!その2~材料の選定編~
3. 必要な工具の準備と効率化
工具は、ドリル、ノコギリ、気密テープ、シーリング材などが必要です。既に持っている工具を活用し、必要なものだけを揃えることでコストを抑えられます。また、工具のレンタルや中古品の利用も検討しましょう。効率的な作業のために、作業工程を事前に計画し、必要な工具や材料をまとめて準備しておくとスムーズです。
4. 資材の無駄を避ける計画的な購入
材料は必要量を正確に見積もり、無駄を避けることがコスト削減につながります。余分に購入するとコストが増えるだけでなく、在庫も増えてしまいます。
防音室の壁の概略
下記の図面には今回防音室を設置する倉庫内の概略図面と防音室を構成する各パーツの配置を示しており、今回の防音壁は下記図面のうちの防音壁1及び2に該当します。
既存倉庫の概略図及び防音室構成の設計図面
また、下記に防音壁1の概略図を示していますが、防音壁1には換気扇とサイレンサーが付随しますが、サイレンサーの詳しい製作方法や設置場所は下記コンテンツのサイレンサー編で解説いたしますのでサイレンサーを製作に悩んでいる方は是非チェックしてみてください。
【防音室自作!完全攻略】|費用・材料・施工ステップを詳しく解説!その7~サイレンサーの自作編~
防音室の壁1の概略図
防音室の壁の構造のポイント
防音室の防音効果は上記にも記載いたしましたが、防音材料の選定と組み合わせに加え、素材を設置する位置も重要になります。
下の図面に私が施工した防音室の壁の構造図面を記載しておりますが、防音室内側に吸音効果のある材料を、防音室外側に遮音効果のある材料を配置しております。
吸音効果のある材料と遮音効果のある材料の配置理由としては遮音材を壁の一番外側に設置して、音を遮断し、それよりも内側で音を吸収させる構造にするためと考えられます。
素材の施工順は関係ないと考えておりましたが、下記に示しておりますように、ダイケンさんの説明書を見ますと、材料を配置する順番は防音効果を高めるために必要そうですね。
防音室の壁の内部構造
材料の配置順は防音室外から
- 12mm合板(防音パネル)
- 遮音材2枚重ね(ダイケン遮音シート)
- 吸音材(ダイケン吸音ウール)
- ニードルフェルト
- 石膏ボード
- パンチカーペット
となります。この配置順序が防音効果を高めるポイントになります。
ダイケンさんの吸音ウールの説明書
防音室の壁の製作手順
私が自作した方法は、防音室の構造体(壁、天井、ドア)をそれぞれのユニットとして先に自作し、最後に組み立てる方法になります。
理由は必要に応じて組立、解体できるような仕様にするためです。家の工法で言うと、ミサワホームのパネル工法が近いかもしれません。
構造躯体材料のカット作業
防音室の壁の大きさは上記図面にあるように高さが1300mm、幅が910mm、厚みが85mmのものを2枚作成します。自作手順は、合板をホームセンターで1300mmにカットしてもらい、石膏ボードは自分でカットします。
石膏ボードの表面は紙で覆われていますので、カッターで紙部分に切れ目を入れれば簡単に割ることができます。カット面は多少凸凹しますのでヤスリで研磨しますと平滑な面になります。
丸鋸やジグソーでカットする方法もありますが、電動工具でカットすると粉塵が発生しますので、上記の方法が一番良オススメです。
防音室の壁のフレームは合板の寸法と同じサイズにジグソーでカットします。
本来なら丸ノコでスパッとカットしたいのですが、ここは我慢、我慢。もう少しの辛抱。赤松の垂木材をカットする際は、ガイドを使うと上手くカットできますよ。サイズは1300mmと910mmですね。
DSC_2063
フレームとパネルの接合作業
防音室の壁のパネル(合板)とフレーム(赤松垂木)をそれぞれカットしましたら、パネルにフレームを接合していきます。なお、防音室の壁1には換気扇を設置しますので換気扇用の枠を付属させる作業も忘れずにおこないます。

合板とフレームの接合部はコーキングで密閉処理して機密性を高めることで防音効果を向上させましょう。
防音室の壁の合板とフレームの接合
遮音材、吸音材のカット
遮音材のダイケン遮音シートはゴム素材なのでハサミ若しくはカッターでカットすることができ、こちらは簡単にカットできます。
吸音材のニードルフェルトは厚みが薄いのでこちらもハサミで簡単にカットできます。
ダイケンの吸音ウールは厚みがあるので上手くカットするには工夫が必要で、一気に切断するのは作業性が悪いのでウール層の上半分を先に切り込みを入れ、その後に全体をカットするとスムーズに作業できます。

吸音ウールは普通のハサミでは切断しにくいのでタチバサミで作業するのが良いです。
吸音ウールを先に上半分カット
吸音ウール全体をカット
遮音材、吸音材の充填
上記の工程までで、パネル(合板)とフレーム(赤松垂木)を接合は完了しています。なお、パネル(合板)側は防音室の外側になりますので、遮音材及び吸音材を充填する順番は上記の設計通り
- 遮音材(ダイケン遮音シート)
- ニードルフェルト
- 吸音材(ダイケン吸音ウール)
の順に構造躯体内に貼っていきます。
遮音シート及びニードルフェルトはタッカーで貼り、吸音ウールは隙間なく敷き詰めます。遮音シートとニードルフェルトは効果を高めるため、二重貼りにしました。
また、吸音ウールの貼り方のポイントは隙間のないように貼ることと、防音室内側に寄せることです。ダイケンさんの吸音ウールの説明書に記載されておりました。
防音室の壁の遮音材とニードルフェルト貼り
防音室の壁に吸音材を詰める
石膏ボードを貼り付ける
最後に予めカットしておいた石膏ボードを貼り付けて完成です。貼り付け方はビスで留めるだけでOKですよ。
防音室の壁を石膏ボードで密閉する
防音室の壁2については換気口がないだけで、構造自体は防音室の壁1と同じになります。
防音室の壁1枚分の重量は40kg程度ありますので製作後の取り扱いがとても大変なので、設置場所の近くで自作するのが良いです。ほんとこれ、めちゃくちゃ重いです。
この防音室の壁を自作している時に、天井のことが一瞬、頭をよぎりましたが(重すぎて持ち上がらないかも。。)何とかなるかと思い、計画を変更せずに突き進みました。
その結果は下記の天上編で。えらい事に。。。
【防音室自作!完全攻略】|費用・材料・施工ステップを詳しく解説!その6~防音天井の製作編~
防音室内側の壁への吸音材の設置
防音室内側の壁には防音室内で発生した音が反響しないように、吸音材を設置します。
音楽関係での防音室の場合は音が反響してしまうため、吸音材は設置したほうが良いです。今回、私の場合は電動工具での作業音を防音室内で閉じ込めるため、壁面に吸音材を設置しないと音の反響で体への負担が大きくなるため、設置いたしました。
詳しい設置方法については防音室の仕上げ編にてご参照くださいませ。
【防音室自作!完全攻略】|費用・材料・施工ステップを詳しく解説!その8~仕上げ・完成編~
防音室の壁の自作ポイント
防音壁の施工ポイント
- フレームは格安木材の「赤松垂木」で施工
- 防音室の壁内部の材料は防音室側には吸音性質のある素材を施工
- 防音室の外側は遮音性能のある素材を施工
- 防音室側から合板⇒吸音ウール⇒ニードルフェルト二重⇒遮音材二重⇒石膏ボード(今回は合板と石膏ボードは逆に設計)
- 密閉性を高めるため接合部はコーキング
- 吸音ウールは二回に分けてカット
- 換気口は予め設計
防音壁製作で よくあるトラブルと対処法
自作防音壁の製作過程では、さまざまなトラブルが発生することがあります。事前に対処法を理解しておくことで、スムーズに作業を進め、効果的な防音性能を確保できます。以下に代表的なトラブルとその対処法をまとめました。
1. 隙間や継ぎ目から音漏れが発生
原因:施工時の気密性不足や材料の不適切な接合。
対処法:シーリング材や気密テープをしっかりと使用し、隙間を完全に封じる。特に接合部分は丁寧に仕上げることが重要です。
2. 防音材の振動や共振による音漏れ
原因:防音材や構造体の振動が伝わること。
対処法:防振ゴムや防振シートを挟むことで振動を抑制し、二重壁や吸音材の配置を工夫する。
3. 材料の剥がれや破損
原因:施工不良や耐久性の低い材料の使用。
対処法:施工時は丁寧に貼り付け、重ね貼りや補強を行う。耐久性の高い材料を選び、定期的な点検とメンテナンスを行う。
4. 施工時間の遅れや作業の手戻り
原因:計画不足や作業手順の不明確さ。
対処法:事前に詳細な施工計画を立て、必要な工具や材料を揃えておく。作業工程を段階ごとに確認しながら進めることで、効率的に完成させる。
防音室をダンボールで自作できるか?簡易に部屋を防音化
今回、私が防音室を自作した方法は自作する手間は別として、できるだけ防音効果を高めるために石膏ボードや、合板を防音室の壁のパネル材として使っていました。
がしかし、最も簡易に自作するのであれば、パネル部分と構造躯体部をダンボールで自作すれば、特別な工具も必要なく簡易に自作することができます。
自作方法も上記と同じでユニット状に遮音材、吸音材入りのダンボールユニットを複数自作し、これを室内の壁に万遍なく敷き詰めていけば、室内を簡易に防音化できます。賃貸でも有効な方法です。
遮音材や吸音材の充填手順は上記と同様になります。
防音室の壁の自作まとめ
以上、防音室の壁を自作する様子でしたが、いくつかのポイントをまとめさせていただきました。
今回は吸音材は二種類使用しましたが、厚みの薄い吸音材は二重に施工できますので、二重施工するとより効果的です。また、遮音材も同様でこちらも二重施工が効果が増します。ただ、遮音材は重量がありますので(2kg/m2)仕上がりの重量に注意しましょう。
遮音材の遮音性能は遮音材一枚で合板一枚分と言われておりますのでより効果的な施工を意識します。吸音材は様々な種類がありますが、作業性及びコストパフォーマンスを考えますと今回私が使用しましたダイケンの吸音ウールがオススメですよ。
今回は防音室の壁の自作について紹介させていただきました。
防音室の自作についての全体概要は下記サイトにて記載しておりますので、全体概要を先に読んで頂けますとより一層防音室の自作への理解が深まります。次回は防音扉について紹介させていただきますね。
【防音室自作!完全攻略】|費用・材料・施工ステップを詳しく解説!その3~設計編~
最後までご試読ありがとうございました。
コメント